物語には「静かなシーン」や「会話シーン」が必要です。
特に、長い映画や、アクションシーンのある物語には、
観客の気持ちを切り替えたり、落ち着かせたり、
次のシーンに対する心構えをしてもらうために必要です。
ずっと高速で走り続けたら、スピードがわからなくなるように、
ずっと感情が動くシーンだけでは、見ている人は疲れてしまいますし、
感覚も麻痺してしまうのです。
それを防ぐため「静かなシーン」は必要なのです。
しかし「静かなシーン」「会話シーン」だからと言って、
つまらなくていいわけではありません。
面白い小説、漫画、映画は「静かなシーン」にもメッセージがあるし、
興味深いし、読者を引きつけるものがあるのです。
この章では、静かなシーン、
特に会話シーンで読者を引きつける方法を紹介します。
静かなシーンで、読者を引きつける方法。
会話中に動きを入れる
会話シーンで絶対にやってはいけない事があります。
それは「淡々と解説だけをする事です」。
男女が向かい合わせに座って、身動きせず、敵への対策を練る。
これはつまらなすぎです。
プロは、それが分かっています。だから、作戦を練るシーンでは、
豪勢なスクリーンにマップを常時したり、キャラたちが歩き回ったり、
書類がこぼれ落ちたり、ドーナツを頬張る奴がいます。
話を急ぎたい時には、作戦会議に敵が乱入、
なんてこともあります(これは別のテクニックですね)。
「でも、小説では、動きを入れるのは大変じゃないの?」と
思われるかもしれませんが、小説でも、会話中にドリンクを飲み干し、
ゲップをさせるだけでも、全く印象が変わります。
会話中の行動で、キャラ一人一人の個性を出すとより効果的です。
『話をしながら、ドーナツを食べ、油まみれの手をズボンでふく』
『ドーナツを食っているやつを見て、汚いなぁと顔をしかめる。そして、ウェットティッシュを渡してあげる』
『主人公の話を聞いて、もっといい提案をする』
『何でも俺に任せろと言う。しかし、苦手な話題が出たときだけは、顔を背ける』
キャラに自己主張させる
物語を進めるためにしか会話をしない、都合のいいキャラがいます。
「登場人物が全員善人ばかりで、読んでいてつまらない」
と言われる物語は大体これが原因です。
これはキャラクターの個性を大事にしない作者が犯してしまうミスです。
プロでもたまにやる人がいます。たまにっていうか結構います。
名前は言えませんが、かなり多いです。
主人公の意見に賛同しかせず、反対意見が言えない。
自分の役割を他人に決めてもらうことしかできない。
そういう個性のキャラなら、問題ないのですが、全員がそうだと、
個性も何もあったものではありません。
物語を勧めるために都合のいい会話だけをして、
全く読者の気持ちを揺さぶらない。
これでは面白くありません。
魅力あるキャラクターは、主人公がなにかを提案したなら、
反対意見、自分の見解、対案、代案、最終的に同意するか、反対するか。
会話に積極的に参加するか、参加しないか。
参加してなさそうで、大事なところでは鶴の一声をあげる。
激昂して反対するか、反対しながらも協力するか。
その発言によって、読者を不安にさせたり、喜ばせたり、怒らせたりします。
必ず反対意見を言えというわけではないので、そこは勘違いしないでください。
自分の意見を言わせましょうという話です。
キャラの個人的な意見というものは、
キャラの個性を把握していれば自然と出てくるものです。
キャラをしっかり作っておきましょう
会話の終着点が、あなたの中で決まっていたとしても、
終着点に至る道は、まっすぐではいけないのです。
読者の疑問に答える。
どうして事件が発生したか、なぜ恋人は出て行ったのか、
なぜ主人公が戦わなければならないのか、なぜ努力しなければならないのか、
解説してください。
これは、物語の核心であったり、仲間が裏切った理由であったり、
どうしても下水道でしかタバコが吸えない理由であったり。
要するに「読者がなぜ?」と思うことに対しての回答なので、
読者は気になって仕方がありません。
はっきりとわかりやすく、読者に回答してあげましょう。
もちろん、疑問自体が上質なものでなければ、
読者の関心は得られないので、気をつけましょう。
心境の変化を語る
頑なだった人が、自分の心境の変化を暴露したり、モノローグで語ります。
これが「昨日、敵は悪いやつだと思ったけど、今日もそう思う」
とかだったら、全く必要ありませんし、興味ありません。
「昨日、敵は悪いやつだと思ったけど、本当は違うのかも」
であれば、読者になぜそう思ったのか疑問も投げかけられますし、
心境の変化によって、どう物語が展開するのかも気になります。
最後に
会話シーンがだらだらと長ったらしくてもいけません。
場面が変化し、状況が変わってこそ、物語なのです。
同じ内容のセリフを何度も繰り返したり、会話が堂々巡りしていたり、
ストーリーの進行に全く関係ないのに、時間をとっていたりするのは最悪です。
どんなシーンでも、
物語を良くするためにあるということを意識してください。