短編を認められ、連載が決まった。
ただ単に、気に入った短編を長編にしたい。
そんな時に参考にしてほしい方法です。
長篇には、三種類あります。
1. 短編を繰り返すストーリー展開。
各話ごとに問題を解決し、起こる問題は毎回、新しいものです。
漫画で言えば、『ブラックジャック』などが有名です。
2. 大きな問題が発生し、その問題を解決するために、
主人公があがき苦しみ、戦いの末、問題を解決します。
物語が終わったときは、全ての問題が解決しています。
映画は、ほとんどこの方法を使っています。
3. 1と2を合わせたストーリー展開です。
小さな短編を繰り返していくうちに、物語の核心に迫っていくストーリーです。
海外のドラマの『スーパーナチュラル』や、漫画の『うしおととら』などが、これに当てはまります。
バトルものの漫画はこれがかなり多いです。
短編を繰り返す方法は
『長編を短編にする方法・短編を作る方法』
とほとんど同じなので、ここでは書きません。
今回は、2と3の作り方を紹介します。
短編を長篇にすることは、長篇を短編にするより簡単です。
なぜなら、長篇の作り方は、短編を伸ばしているだけに過ぎないからです。
どんなに長いストーリーも、物語の中心となる問題が解決すればおしまいです。
長篇は、中心となる問題を解決する過程に、
小さな問題が大量に発生するだけなのです。
では、あなたの考えた短編を、いつでも見れる状況にして、
読み進めてください。
その短編が解決すべき問題は何か?
あなたの短編で解決するべき問題は何でしょう?
どんな問題を解決したら、その物語は終わっていますか?
それを書いてください。
(例)
敵を倒したら終わり。
さらわれた姫を助けたら終わり。
恋人を手に入れたら終わり。
長篇にするには、その問題の解決を、難しくする必要があります。
つまり、邪魔が増えるということです。
邪魔を増やす方法として、よくある方法。
★距離を遠くする
例に挙げた「悪役を倒したら終わり」なら、
悪役は主人公から遠く離れた土地にいることにしてみましょう。
「さらわれた姫を助けたら終わり」なら、
姫は遠い魔王の地に移動してください。
「恋人を手に入れたら終わり」なら、恋人は外国の人とかです。
これの利点は、移動中に敵の邪魔を入れやすくなります。
道中でのトラブルにより、主人公が成長したり、
新しいキャラクターを登場させたりできます。
道中、どのように行動するかによって、キャラクターを深めることもできます。
敵役が、主人公をどうやって妨害するかを描くこともでき、
敵のキャラを深めることができます。
★キャラクターの成長に時間をかける
「悪役を倒すためには」「姫を助けるためには」の二つの場合なら、
最初の主人公では敵に敵わないようにしましょう。
「恋人を手に入れる」では、最初の主人公では、
見向きもされないようにしましょう。
物語の目標を達成するためには、主人公の成長が必要です。
主人公が成長するために、どのような修行、練習、勉強をするのかを描き、
主人公のキャラを深めます。師匠も登場させることができます。
主人公が成長している間、敵役が、何をしているかを描くことにより、
敵役のキャラを深めることができます。
★心理的な距離を遠くする
主人公の境遇、目標への障害、悪役のレベル、それらを変え、
さらに物語の問題解決を難関にします。
「キャラクターの成長に時間をかける」にも応用できます。
あなたの短編で、主人公が平均的な能力を持っていたなら、
平均以下の能力にしたり、貧乏だったり、身分を低くするなどして、
目標への障害を増やしましょう。
敵役の能力を上げたり、ほかのキャラクターが味方になってくれないなど、
心理的な距離を開けることによって、さらに主人公の成長が必要になります。
悪役を倒すのが目的なら、悪役を強くしたり、
特殊な武器じゃないと倒せなかったり、色々な方法があります。
さらわれた姫を助けるのが目的なら、少し視点を変えてみましょう。
洗脳により、姫が主人公を敵だと思い込み、自主的に悪役と逃げている。
など、主人公を困らせるのが、長篇の秘訣です。
★キャラクターを増やす
よくある方法なだけに、効果的です。これは、味方でも敵でも当てはまります。
キャラクターを増やすことにより、解決すべき問題を増やすことができます。
敵が増えれば、主人公の障害が増え、
味方が増えれば、巻き込まれるトラブルにも、バリエーションが増えます。
味方にも家族がいて、恋人がいるとなれば、
その人たちに起こるトラブルも解決しなければいけません。
敵にも主人公を邪魔する理由があるとなれば、それを解決すれば、
主人公の仲間になってくれるかもしれません。
キャラクターを増やすということは、
可能性が無限に広がることにつながります。
逆に、増やしすぎると、手に負えなくなるので気をつけましょう。
(ここまで書いた方法は、ほとんどが、キャラクターを深めることにつながります。
長編は、キャラクターを深めることによって、作られると言っても過言ではありません)
★設定を深める
あなたのキャラクターの設定を深めるために、設定を書き出しましょう。
(例)
・主人公は、剣がめちゃくちゃ強い。
・姫は、病弱
・主人公は、恋人ができたことがない。
書いたら、なぜそうなのか?
それ故に起こる障害、それ故に得したこと、それ故の人間関係、
それ故の心理など、思いつくことを何でもいいので、書いていきましょう。
(例)
主人公は、剣がめちゃくちゃ強い
→親が厳しくしたから。つまり、親は、もっと強い。
→強いせいで、魔王を倒してくれと言われた。めんどい。
→ライバルが多くていつも決闘を申し込まれる。ライバルが仲間になったり、敵になったりする。
→本当は、パティシエになりたい。魔王を倒しに行く道中で仲間に披露。
→剣しかやってこなかったので、世間知らず。仲間の手助けなしには、船の切符すら買えない。
姫は病弱(さらった理由は「人質にするため」とする)
→さらわれた時に病状が悪化。死にそうになり、悪役も困る。
→定期的に薬を飲まなければいけない。その薬を作っている薬師を悪役がさらう。
→定期的に薬を飲まなければいけない。その薬を運び込む時を狙って、主人公が潜入。薬師を装って、主人公が潜入。
→病弱を治せる方法がある。それと引き換えに、姫は悪役と取引する。
→病弱な姫と引き換えに、健康的な姫を交換。交換された姫は、実は主人公。
主人公は恋人ができたことがない
→性の知識だけはあり、むっつりスケベ。友達といやらしい本を交換し合っている。
→恋人がいる友人に、恋人を作る方法を教えてもらう。
→ライバルと好きな人がかぶる。友人と好きな人がかぶる。
→好きになったきっかけ。助けてもらった。見た目がいい。趣味が一緒。告白された。などなど……
→異性と話すとあがってしまい、上手く話せない。矯正するため、お店で練習。接客のバイトで練習。
設定を深めるだけで、書けるエピソードが増えることがわかりますね。
主人公だけでなく、脇役、悪役も同じように設定を深めてください。
そうすれば、長編でも書ききれるかわからないほどの
エピソードが生まれるはずです。
キャラクター以外でも、
世界観の設定を深めることもエピソードを増やすきっかけになります。
(例)
この世界はファンタジー世界。飛行機はなく、海は船、地上は馬車か徒歩で移動する。
空を飛べる魔法はあるが、ごく一部の魔法使いにしか使えない。
→空を飛べる魔法使いは貴重。つまり、職にこまらない。
→敵が空を飛んでいたら、空を飛べないキャラは不利。必然的に、空を飛べるキャラクターが敵を倒すことになる。
→空を飛べる奴が、敵味方共に少ないため、対空兵器は少ない。つまり、空を飛べる部隊を作れたら、この世界では無敵。空を飛べるようになる道具を作れたら、革命が起きる。
→空を飛ぶ宅配便は、人が少ないため、値段が高くなる。必然的に、金持ちしか利用できない。
→空を飛べる人が少ないため、空を飛べる奴らは、飛んでいる時、油断している。
→空にうかぶ城があったら、発見されない。
→ナスカの地上絵みたいなものの全貌を見る事が困難。その地上絵が魔法陣とかだったら、空を飛んでいる人にしか見えない。
ここまで書くと、設定を深める事が、
ストーリーを作る土台になる事が分かるはずです。
長編を作る時には、設定を深め、それをどう活かすかが大事です。
ヒーローズジャーニー(神話の法則)に当てはめ、長編を作る
物語の構成として、序破急、三幕構成、ヒーローズジャーニー、
と色々ありますが、基本的には、全て同じものです。
しかし、ヒーローズジャーニーは、細かく12の段階に分けられているので、
長編には使いやすいです。
逆に、短編にヒーローズジャーニーを使おうとすると、
少しはぶかないと使いにくいです。
ヒーローズジャーニーは長編を作るのにはもってこいの構造です。
(ヒーローズジャーニーを知らない方は、私のサイトを見てください)
まずは、ヒーローズジャーニーの基本にのっとって作り、
物語を作って行く間に微調整をする事がオススメです。
カタルシスは短編より強くする
強くならないと長篇にする意味はありません。
主人公は短編の時より苦労し、努力して問題を解決します。
たとえ、短編と同じ量の努力だったとしても、長篇では、
その努力を深く描かなければいけません。
故に、長編では、短編よりもカタルシスを強くする必要があるのです。
(これは、短編をくりかえす作り方には当てはまりません)
物語の最初と終わりで、変化している事や、人を増やす。
物語の最初と終わりで何も変わっていなかったら、
物語の存在価値はありません。
短編では、主人公しか成長していない事があります。
短編なら、それでも大丈夫です。
しかし長編では、脇役、適役、世界観、など、変化している事や、
物、人を増やしましょう。
より多くの事柄が変わった方が、長編としての価値が上がります。
物語の初めから終わりまで、登場したキャラ、世界観、事件など、
クライマックスでどう変わるかを、事前に考えておくと、
物語の構築がしやすいです。