物語は、問題を解決することが目的です。
問題には色々ありますが、その一つに、
主人公に足りないものを補うと言うものがあります。
才能がなかったり、恋人がいなかったり、家族が冷たかったり、
社会的地位が低かったり、貧乏だったり。
そのようなコンプレックスにリアリティを持たせるためには、
作者自身のコンプレックスを使うことがいちばんの近道です。
では、どうやったら、あなたのコンプレックスを
作品に活かすことができるのでしょうか?
自分のコンプレックスを、作品に活かす方法
まず、自分が解決したい事。自分に足りないもの、
コンプレックスだと思っている事を、思いつく限り書いてください。
(例)
身長が低い。病気がちだ。貧乏だ。異性にモテない。絵が下手。住んでる場所が田舎。家族が理解してくれない。才能がない。仕事がうまくいかない。
書き出したら、そのコンプレックスのせいで、
どのような被害を被っているかどうかを書いていきましょう。
(例)
身長が低い→
子供扱いされる。バスケでいつもボールを取られる。電車や、バスのつり革を握れない。
高い場所にあるものをとれない。喫茶店の椅子にうまく座れない。
家族が理解してくれない→
漫画家になりたいと言っても、否定され、進路を妨害される。
着る服とか、付き合う友人を制限される。
何かにつけ「だからお前はダメなんだ」と言われる。
成績が悪いと、遊びを制限される。
貧乏だ→
いつも同じ服を着ている。電車やバスに乗れず、かなり遠くから自転車通学。
友人と一緒に外食に行けない。服や教科書は全てお下がり。
流行をしらず、友人の会話についていけない。その辺で取った野草や虫が、夕食に出る。
これだけでも、キャラクターがはっきりしてきましたね。
でも、これで終わりではありません。
次に、あなたが、コンプレックスを持っているゆえに、
強い部分を書いていきましょう。こじつけでも構いません。
(例)
身長が低い→
狭い場所に入れる。子供扱いされるから、優しく対応される。機敏な動きができる。
背の高い人の視界に入らず行動ができる。
チビだと舐められるが、その油断をつき、勝利できる。
食べる量が少量で済む。見た目で舐められる分、過度な期待をされない。
家族が理解してくれない→
家族に頼らず、自分の力で頑張るクセがついた。子供を縛らない、友人の親の良さがわかる。
進路を妨害されたせいで、妨害に屈しない心が身についた。
自分の意見を持ちながらも、他人の意見を聞けるようになった。
何だかんだ、学力はついた。やりたいことができなかった反動で、親から離れたら、
やりたい事を死ぬほどやれるようになった。孤独に強くなった。
貧乏だ→
自転車で登校していたので、脚力がついた。金がなくても、生きていけることを知っている。
虫や野草の取り方を知っている。お下がりの服の裁縫方法を知っている。
流行を知らないゆえに、人とは違う感性を持てた。
では、次に、コンプレックスの解消方法を、思いつくだけ書いてください。
これは、フィクション設定や、ファンタジー設定を使っても構いません。
身長が低い→
スピードを生かし、バスケで活躍。
狭い場所に閉じ込められた人を救う。
子供みたいな見た目を活かし、学校に潜入。
薬や魔法で、身長を伸ばす。
身長が伸びる方法を研究し、それを実行する。
つり革につかまれない人のために、発明をする。
家族が理解してくれない→
家族が嫌っていた友人を、認めさせる。
家族の意見を聞かず、成功者になり、自分が正しいことを証明する。
ブチギレて、家族に毒を盛る。家族の魂を入れ替える。
家族が正しかったと認める。
家を飛び出し、なぜかこの世の支配者になる。
貧乏だ→
貧乏でも幸せだと思い込む。
金持ちになるために勉強しまくる。
金持ちと結婚する。
魔法で王様にしてもらう。
金銀財宝を掘り当てる。
貧乏から抜け出すために危険な仕事をする。
ここまでくれば分かると思います。
あなたのコンプレックス。
それ故に被る被害。
コンプレックスを持っているが故に持つ強い部分。
コンプレックスの解消方法。
これらを組み合わせれば、一つの物語が出来上がってしまいます。
(例)
身長が低い。
低いが故に、周りからバカにされ、通学バスでも、つり革がつかめず転ぶ毎日。
ある日、動きの機敏さを認められ、バスケ部に勧誘される。
最初は「背が低い自分がバスケなんて」と思っていた。
しかし、身長が低いことで、身長の高い人の死角に入れることに気づく。
その小ささと、機敏さで、敵の死角に入り、バスケ部で大活躍。
「身長が低い? それは短所ではなく、長所だ」と思えるようになった。
家族に理解されない。
親が事あるごとに、俺の行動を制限する。
遊びはダメだし、友人も金持ちの子供としか付き合ってはいけないと言われる。
だが、俺はもう言うことを聞くのは嫌になった。
中学に上がったあたりから、俺は親の言うことを聞かず、好きに友人を選び、遊びも好きなことをした。
親はいつまでたっても俺の反対意見だ。
反対されるからこそ、反発したくなるってのがわからないらしい。
親への反発のエネルギーから、俺は、バンドを始めることにした。
バンド仲間は、親が嫌いな友人だ。
反発エネルギーは凄まじく、バンドの人気はうなぎ登り。
最初は「音楽なんて不良のやることだ」と言っていた親も、
今では、俺のファンだ。
貧乏だ。
いつも下校途中で野草とバッタをとって帰る(夕食のため)。
服はいつも同じで、休日の前に洗面台で洗う。
テレビもスマホもないから、流行がわからない。
だからクラスメイトとも、話が合わなくて、友人ができない。
クラスメイトには、いつもバカにされている。給食がなければ、学校には行ってない。
遠足の日。俺をいつもバカにしている奴らとグループにされ、山に登った。
グループ全員で遭難した。
と言うわけで、食べられる野草とか、虫とかに詳しい俺は、食料を確保した。
そのおかげで、俺は見直された。
今では、一緒に遭難した奴らとは、親友だ。
終わり方は、三種類しかない。
主人公のコンプレックスを題材にした場合は、終わり方は三種類です。
コンプレックスを解消し、新たな自分に生まれ変わる
これは、コンプレックスが、努力や魔法、運、他人の親切により、
なくなってしまうことです。
ただし、一歩間違えると、
主人公の個性がなくなってしまうことがあるので気をつけましょう。
コンプレックスをものともしなくなる。
コンプレックスだと思っていたものが、物語を進めるうちに、
長所となるパターンです。
あるいは、コンプレックスが気にならないほどの長所を得ることです。
主人公の個性を活かしやすく、もっとも使われている手法です。
コンプレックスがひどくなる。変わらない。
ただのバッドエンドです。主人公のコンプレックスが物語開始のままだったり、ひどくなったりして終わります。
物語開始時点から、誰も変わらないと言うのは、
物語としては存在価値がないので(ギャグは別)、
コンプレックスがひどくなった方が、変わらないよりマシです。
他人のコンプレックスを作品に活かす方法は、
友人から聞いたり、飲み会で話を聞いたり、ドキュメントを見たり、
映画を観たりして、取材をしてください。
そして、それを、追体験してください。
「自分だったらこう感じる」「自分だったら、こうする」
「自分だったら、耐えられないだろうな」というように、
自分に、他人の経験を当てはめ、自分のコンプレックスのように扱い、
作品に活かすのです。