「長編はかけるのに、短編が書けない」
「マンガを雑誌に投稿するために、短編を書かなくてはならない」
「読み切りを依頼された」
「長い話なんて書きたくない」
特に、マンガ家のプロを目指している人にとっては、
短編は避けては通れない道です。短編をかけないから、
ネットでしか作品を発表できないなんて、よくある話です。
そんなひとにも、短編をかけるようになる方法を紹介します。
長編を短編にするのは、短編を長編にするより難しい?
長編は作業量が多いので、それはそれで大変なのですが、
短編は、好きなシーンを削ったり、限られたページ数で、
キャラクターの魅力や設定を描かなくてはいけないため、
長編とは違った難しさがあります。
ですが、これから書く方法を実践すれば、
簡単に短編を作る事ができるようになります。
長編を短編にする方法と、短編を一から作るのは、ほとんど同じ?
同じだけ手間がかかると言った方がいいですね。
長編を短編にするには、設定以外一から考え直します。
これが長編を短編にする難しさです。
物語には、最低限必要なものがあり、その見極めができていないと、
短編を作る事が出来ません。
逆に、最低限必要なものを見極めていれば、
短編を作ることは簡単になります。
★「短編を一から作りたい」という方は、まず、
「魅力的なストーリーの作り方」「魅力的なキャラクターの作り方」
を読んで、物語の基本形やプロットを作ってください。
それが出来たら、紙とペンを用意して、次へ進んでください
1.一番伝えたい事以外は、捨てる
あなたの物語で一番伝えたい事、描きたい事を選び、他は捨ててください。
物語の目的が「勇者が魔王を倒す」だったらそれ以外を捨ててください。
「捨てたらもったいない」と思えるエピソードや、
設定があるでしょうが、今は堪えて、捨ててください。
長編を短編にするときや、
短編を作るときに一番邪魔になるのは
「せっかく考えたエピソードや設定を、物語に使いたい」
という欲です。
描きたい事は、
「成績が上がっていく主人公」や
「ドキドキする恋愛を描きたい」など、
テーマを主体にしなくてもいいです。
むしろ、テーマを主体にしない方が、いいものが出来上がります。
一番描きたい事以外は、一度捨ててください。
2.一番描きたい事を中心にして、最低限の設定、キャラ、
ストーリーを作り出す。
★「勇者が魔王を倒す」が描きたいなら、魔王と勇者、
二人だけで戦っている場面をまず考えます。
「成績が上がって行く主人公」が描きたいなら、
勉強をしまくっている主人公を描きます。
「ドキドキする恋愛を描きたい」なら、自分を磨いている主人公を考えます。
あなたが一番描きたいシーンを想像して、
どのようなシーンかをメモしてください。
ここで重要なのは、キャラクターを必要最低限の人数にする事です。
これらの例は、どれも二人になります
(雑魚敵やモブなどの、名のないキャラクターは数えない)。
★次に、上記の主人公の行動は
「どんな問題を解決するための行動なのか」あるいは
「どんな問題を解決したシーンなのか」を考えます。
(例)
「勇者が魔王を倒す」なら、
→魔王に脅かされている村々を助けるため
→魔王に詐欺られた住人の金を取り戻すため
→魔王が、姫をさらったから、姫を助け出すため。
「成績が上がって行く主人公」なら
→成績が上がらないと、志望校に受からない
→成績が上がると、プレゼントがもらえる
→成績が低いと部活の試合に出れない
「主人公が告白して、成功するシーン」なら
→恋人を作りたい
→片思いを解消したい
→周りの友人はみんな恋人がいる。それが悔しいから。
このように、「あなたの一番書きたいシーン」は
「どんな問題を解決するための行動なのか」
「どんな問題を解決したシーンなのか」を書いてください。
書くことによって、
物語の中心となる問題が浮かび上がってきます。
主人公が「この問題を解決しようと決心する事」が、物語の始まりとなります。
この作業をすることによって、
物語の内容を一言で表せるようになりました。
一部をピックアップすると、
「魔王に脅かされている村々を助けるため」→「勇者が魔王を倒す」
「部活の試合に出るため」→「主人公は成績を上げる」
「片思いを解消して」→「恋人を作る」
などです。
3.主人公が動く動機を作る。
物語の中で、解決すべき問題を決定したら、次は、動機です。
主人公が「その問題を解決したい」と言える動機が必要です。
「なんの理由もなく、命の危険を犯して、村を救う」
「成績を上げなくても、何も困らないけど、必死になって成績をあげる」
「好きでもない恋人をゲットするために、必死になる」
これでは、読者が主人公に共感できません。
主人公が動き出す動機には、わかりやすく、
数ページで表現できるものが必要です。
もちろんここでも、主人公が読者に共感してあげられるような
動機を持ってくるのが重要です。
「村は自分が育った村。だから救いたい」←故郷を大事にする心に共感できる。
「成績を上げないと、優勝がかかった試合に出れない」
↑ せっかく手に入れられそうな栄光を失うという、危機感に共感できる。
「中学生活ずっと片思いだった。告白して、振り向かせたい」
↑ 好きな人と両思いになりたいという心に共感できる。
このように、主人公の行動に強い動機をもたせます。
主人公が問題を解決する動機を書いてください。
「長編では、もっと複雑な設定だった。それを捨てるなんてとんでもない!」
その気持ちはわかります。しかし、短編では、
捨てることが肝心なのです。
捨てることが短編を良いものにするのです。
例えば、長編では、
「主人公が行き倒れになってた。
それを救ってくれた村の人を助けるために魔王を倒す」
という設定だったかもしれません。
それを描くには、主人公が行き倒れになり、
救われるシーンを描く必要があり、村人と仲良くなるシーンを描き、
魔王に脅かされるシーンを描く必要があります。
でも、それでは、描くべきことが多すぎです。
「主人公が育った村が魔王に襲われる」に変えてみましょう。
この場合、主人公の生活を描き、主人公が狩りでもして、
その強さを読者にアピールすれば、あとは魔王軍に、
村を襲ってもらうだけです。
重要なのは、どちらが無駄がないかです。
短編を作るときには、自分が伝えたいことをたった一つ伝えるために、
無駄を極力省く必要があります。
(例)
もっと短くするなら、村人に依頼されて、
主人公がやってくるという設定にすれば、かなり短くできます。
村人との人間関係は、金だけの関係。
村人が主人公を呼んだ理由を、自然に語れる。
主人公の強さの説明が「そういう職業の人だから」で済む。
傭兵とかにでもしておく。
金で動く主人公なので、いちいち「人を守るため」とか
「人情」を描く必要がない。
物語の終盤に「主人公は、金に左右されないところもある」的な感じで、
主人公の熱い心でも描けば、物語はもっとよくなる。
4.あとは結末を描くだけ
物語の中で解決すべき問題を決定済み。
「なぜ、解決したいのか?」という動機を決定済み。
あとは、結末を描くだけです。
書きたいシーンによっては、もう結末が出来ている人もいそうですが、
また書きましょう。
主人公が勝つことによって、何が手に入るか、
何が変わるか、何が救われるか。それを書いてください。
もちろん、主人公が解決したい問題は解決され、欲しいものは手に入ります。
5.どう肉付けするか?
これだけでは、かなりシンプルなストーリーです。
何か物足りないのではないでしょうか?
肉付けの仕方
★まず、描きたいことを思いっきり描けているか? を確認する。
一番最初に書いた、「一番伝えたいこと、一番描きたいこと」
が思いっきり描けているかどうかが最重要です。
これを描くために物語を作っているのに
「ストーリー展開上、短くなってしまった。描けなかった」
という事が多々あります。
その場合は、他の部分が「本当に一番伝えたいことを引き立てているか?」「限界まで無駄を削ぎ落としているか」を再度確認します。
(例)
恋人と出会い、一目惚れ
→物語が始まったときには、もう出会っている事にする
(出会いのシーンをカットし、主人公の回想でうまく恋心を説明する)
村が襲われる
→主人公が到着したときには、襲われて数時間経っていた
(生き残った人に説明をさせて、襲われるシーンをカット)
★主人公が周りの人に影響を与えているか?
主人公が問題を解決する事によって、
主人公以外にも変化する人がいるべきです。
それは、主人公の行動に感化され、行動が変わる人々のことです。
(例)
主人公が魔王と必死に戦う。
→魔王には敵わないと諦めていた村人も、主人公の戦う姿を見て、勇気が湧いてきた。
武器を持って戦い始める。
主人公に告白されたキャラクター。
→自分なんかで良いのかと、ずっと悩んでいた。しかし、主人公が誠実に対応してくれるので、 自分に自信が持てるようになった。
必死に勉強して、成績を上げる主人公。
→最初は、主人公をバカにしていた優等生。必死に勉強する主人公に感動し、
勉強を教えにきてくれる。
ページ数によっては入れられません。
しかし、主人公の行動によって、ほかのキャラが成長するのは、
かなり王道ですので、入れられるのなら、入れて損はありません。
6.ここで初めて、長編で使わなかった設定を入れられるかを確認する。
ほとんどの場合は、使えません。
長編のための設定と、短編のための設定は目的が違いすぎるからです。
長編の設定は「描きたいこと、伝えたいことを、より上質に伝える」にあり、
短編の設定は
「描きたいこと、伝えたいことを、一番手っ取り早く伝えるため」
にあるからです。
もし、ページ数や文字数に余裕があり、
長編で使っていた設定やキャラクターを入れられそうなら、入れてみましょう。
しかし、取り入れた設定が
芋づる式に描くべき描写を増やしてしまうなら、簡略化する必要があります。
(例)
主人公は、実は魔王の子供だった。
→魔王と同じ能力を持っていたり、姿形が似ていたり、離れ離れになってしまった経緯を描かなくてはならない。
だとしたら、主人公が魔王の子供だったという設定で、
あなたは何を描きたかったのかを分析する。
・親を倒さなければならない主人公の悲哀を描きたいのか?
・魔王と同じ能力を持っている主人公の活躍を描きたいのか?
・魔王の子供だということを知られた主人公が、周りの人たちに冷たくされるところを描きたいのか?
もし『親を倒さなければならない主人公の悲哀を描きたい』なら、
単純化するために「主人公の親が洗脳されて、倒さなければならない」
に変える。
もし『魔王と同じ能力を持っている主人公を描きたい』なら、
「主人公がコピー能力を持っている」とか「魔王と同じ学校出身」
などに変える。
もし『魔王の子供だと知られた主人公が、
周りの人に冷たくされるところが描きたい』なら、
「主人公が魔王と同じ種族」「主人公の戦い方が怖すぎる」などに変える。
……などなど
例のように変えて、本当に短くなるかは、
物語の設定やストーリーに左右されますが、
重要なのは「描きたいことを、どう簡潔に伝えるか」です。
7.最終的に、伝えたいことが伝わっているか? 描きたいことが描けているかを確認する。
描き終わった作品が、本当にあなたの描きたかったことが
描けているかを確認してください。
もしかしたら、描いているうちに、
描きたいことが変わっているかもしれません。それでもいいのです。
描きたいことが読者に伝わり、心になにかを残せれば、その作品は成功です。
逆に、なにを伝えたいのかわからない作品になってしまっていたり、
なにをしたいのかわからない作品になってしまっていたら、
その作品はただの練習用です。
自分と読者の心が繋がっているかを確認しましょう。
番外編
短編を作るには、現代劇が一番?
ファンタジーを描きたい気持ちはわかりますが、ファンタジーの場合、
世界観の説明にどうしてもページ数がかかります。
異世界転生ものでも、最低限の説明が入ります。
現代劇なら、その説明が入りません。いきなりストーリーを始められるのです。
自分で世界観を構築する必要もなく、
お金の概念や、仕事、法律、全て説明しなくていいのです。
資料もいちいち探す必要なく、そこら中にあります。
現代物は、練習にはもってこいなのです。
建物を描く練習も簡単に行えますし、自分で撮った写真を、
そのままパソコンに取り込んで、少し加工するだけで背景にできます。
もし、ファンタジー系のものを書いていて、
短編作りに困っていたら、まず現代物を書いてみるのがオススメです。